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(解説)2015年 豊かな青森県を実現するための基本政策

 

2015年2月16日 青森県政を考える会

 

1.青森県政の会がめざすもの

 

 「青森県政を考える会」は、県民の立場から青森県の政策課題を検討することを目的として設立されました。豊かな青森県を実現するため、県民の立場に立ってそのあるべき姿・方向性を「政策」という形で提言します。あわせて青森県政がこれまで進めてきた政策を検証します。

 青森県が抱える課題や方向性についての要望や提言は、これまでも様々な団体が、それぞれの立場から各分野にわたって、県議会や知事へ、署名や請願・陳情、要望書の提出という形で行ってきました。それはそれでとても重要なことですが、どうしても個別の課題に限られ、しかも関係議員や関係部署とのやりとりに制限されることが多く、県民自身が県政全体関わる問題を広く論議する場はありませんでした。

 これを克服するためには、広く県民に県政のあるべき姿を提起し、県政の主権者である県民との論議を重ねることで、県政を作りあげていくことが重要です。そのことが日本国憲法でも触れられている「住民自治」を下から作りあげていくことにも繋がっていくのではないでしょうか。青森県政の会は、県民の立場から県政全般の課題を財政問題も含めて総合的に検討し、政策化することをめざしています。まだまだ不十分なところはありますが、今回の「基本政策」の提言でその第一歩を踏み出しました。

 

2.政策を検討する上でその土台としたもの

 

 日本国憲法の基本原理である「国民主権」「平和主義」「基本的人権の尊重」を、県の政策の土台にすえることが、県民一人一人の幸せを実現するとともに青森県を発展させていく上で重要です。私たちは、日本国憲法のこの三つの基本原理が生かされる青森県政の実現をめざします。

 

3.青森県の現状をどうとらえるか

 

 青森県の政策を考える際に基本となるのは、青森県の現状をどうとらえるのか、ということです。2015年「豊かな青森県を実現するための基本政策」前文で、青森県の現状について簡潔に指摘をしていますので改めてここに紹介します。

「わが青森県は、太平洋・陸奥湾・日本海の三つの海と日本百名山である八甲田山・岩木山、そして世界遺産である白神山地を有する、日本有数の自然に恵まれた地域です。その美しい自然と豊かな農地・海は、滋味あふれる農産物と魚介類、そして三内丸山に代表される個性的で独自の文化と歴史をはぐくんできました。

しかし今日の青森県の現状は、心を痛める状況ではないでしょうか。雇用の減少と県民所得の低迷で若者は県外に流出し、少子高齢化が進む中で、人口は急速に減少しています。特に過疎地域の急速な人口減少は、自治体そのものの存立の危機をもたらすまでとなっています。また、都道府県別平均寿命は男女とも最下位、自殺率では秋田県に次ぐ第二位は返上したものの依然高い水準となるなど県民の生活は苦しく、憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」が脅かされています。

その上、東通原発、六ヶ所核燃料サイクル施設、ウランとプルトニウムを一緒に燃やす世界初の大間原発、米軍の世界戦略の最前線に位置づけられている米軍三沢基地・むつのガメラレーダー・車力のXバンドレーダーなどは、県民の安全を一層脅かすものとなっています。

さらに、消費税増税・TPP・普天間基地移設・原発再開・憲法改悪・労働法制改悪・社会保障改悪などの国の悪政が、県民の貧困と格差を拡大させ、安全を脅かし、平和を破壊しようとしています。」

 

 一方、2014年3月に青森県が発行した、「青森県基本計画‘未来を変える挑戦’」(以下、「基本計画」)で、「知っておきたい現状と課題」として以下のような主旨の現状分析を行っています。

  県内の情勢

ア 平成52年の青森県人口を93万2000人と推計するなど、急速な人口減少が進んでいること。

イ 若年層の県外転出者が多いこと。

ウ 平均寿命が全国最下位であり、比較的若い世代の死亡率が高いこと。

エ 高速インターネット環境の普及率が低いこと。

オ 高速交通体系の整備により交通アクセスの利便性が向上したこと。

  全国的な情勢

ア 全国的にも人口減少が進んでいること。

イ 経済のグローバル化と国内産業空洞化の進行。世界経済の影響を受けるリスクが増大していること。

ウ 携帯型情報端末が急速に普及し、社会・経済活動に大きな影響を与えていること。

 

 比較してわかるように、県の「基本計画」の現状分析に欠けているのは、県民にとって一番重要な、私たちの生活がどのようになっているかという「県民の視点」です。なぜ県民所得が低迷しているのか、なぜ自殺率が高い水準なのか、県民の「健康で文化的な最低限度の生活」が脅かされていないか、軍事基地や原子力施設が、設置されている地元自治体へのプラス効果と引き換えに、県民全体にどのようなリスクと不利益をもたらしているのか、などを真正面からとらえ分析することなしに、県民の願いに沿った青森県のあるべき政策を作り上げることは出来ません。

 今回、私たちはこうした視点から、青森県のあるべき姿を政策化する取り組みにチャレンジしました。

 

4.「豊かな青森県を実現するための基本政策」を読み解く

 

 「豊かな青森県を実現するための基本政策」は、一見すると各分野の政策が羅列され、どのような構成になっているかがよく見えてきません。分かりやすくするために解説をつけましたので、「基本政策」と見比べながらご覧ください。

 

(1)日本国憲法を基本にすえた県政運営をはかりましょう。 = 政策Ⅰ参照

 日本国憲法の根幹は「国民主権」です。青森県で言えば「県民主権」です。国が言う事だからやむを得ない、国策に従う、というのではなく、青森県のことは青森県が決める、という基本的な立場に立ち、大多数の県民が不利益を被る国策に対しては、きちんと物申す県政をめざしましょう。

地方自治法は、その第1条で、「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として」いることを明記しています。「福祉の増進」と言えば、日本国憲法第25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」を思い出す方も多いでしょう。また、「福祉の増進」は平和なくしては実現できません。文字通り憲法9条に則った県政運営が求められています。

 以上のように、‘青森県の政策は、この日本国憲法と地方自治法に則って行われているのです’ということを明文化し、この実現に励むことを宣言することは、多くの県民を励まし、青森県の活性化に大きく寄与するに違いありません。

 

(2)中央依存の政策を改め、青森県民が主人公の地域づくりを進めましょう。青森県の「豊かな自然」を100%活用しましょう。 

= 政策Ⅴ、Ⅵ、Ⅶ参照

 三内丸山遺跡や、十三湊の発展、特徴のある祭り等にもみられるように、青森県は独自の文化と歴史をはぐくんできました。しかし今はどうでしょうか。青森県民はお人よしなのかどうか、県民の稼ぎ高は中央資本の大企業にどんどん吸い取られて地元に残らず、中央が核のゴミや軍事施設などを押しつけることに甘んじています。

 主人公は青森県民です。県民が稼ぎ出した富が県内で循環するような仕組みを作ります。県の基幹産業である農林水産業・地場産業の振興と活性化を、財政政策、産業政策の基本に据えます。県内企業の育成をはかり中小零細企業への支援を手厚くすると共に、大手ゼネコンでなければ参入できない大規模建設公共投資から、地元の資本が参入できる、社会保障や生活関連公共事業へと財政支出をシフトします。

 全国でも有数な豊かな自然環境に恵まれた青森県の特長を生かし、観光産業や農林水産業と結び付ける中で県内産業の発展を図ることも重要です。

 

(3)青森県民が主人公の地域づくりを進めるための障害物は、思い切って撤去を! 

= 政策Ⅰ、Ⅷ参照

 東京電力福島第1原発の事故は、原子力発電所が抱える大きなリスクを明らかにしました。万が一いったん事故が起きれば、この青森県の豊かな自然は一瞬で台無しとなります。こうしたリスクに目をつぶり目先の利益を追う政策は、すみやかに転換が図られるべきです。原子力立地関連交付金は、自治体にとっては一種の「麻薬」との認識が不可欠です。原発・核燃産業が県内に及ぼす経済関連効果はほとんどない、ということも明らかになっています。

 三沢米軍基地をはじめとする県内各地に設置されている軍事施設は、国際的には、対立国からの攻撃の的となる重大な危険を抱えています。下北半島にある日本一の猿ヶ森砂丘など、県民の目から隠されている広大な軍事施設用地は、その平和利用によって下北観光の大きな目玉になる可能性を秘めています。

 青森県民が主人公の地域づくりを進めるうえで、原発・核燃施設、軍事基地など、青森県の発展にとってマイナス、リスク要因となっている施設群への依存・容認政策からの脱却をはかりましょう。「ロッカショ」や「ミサワ」という言葉が、危険な核燃施設や世界有数の軍事基地が集中する地域として、国際的にも有名だ、ということを御存知ですか?これではせっかくの豊かな自然も色あせてしまいます。

 この自然豊かな青森県に、県外のみならず海外からも多くの観光客に来ていただくためにも、核・軍事の青森県から平和で自然豊かな青森県へのイメージの切り換えは、青森県が今後発展していく上で不可欠な政策です。青森県の「基本政策」に、この点がすっぽり抜け落ちているのが残念です。

 

(4)働きやすい、暮らしやすい、子供たちがのびのびと成長できる、豊かな青森県をつくりましょう。 

= 政策Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ参照

 青森県に於ける少子高齢化の危機は、自治体の維持ができなくなると懸念されるまでに深刻です。働きやすく暮らしやすい青森県となるためには、この地に住む県民の生活に目を向けた政策の転換が必要です。たとえば、今までタテ線で区切られてきた行政の管轄の運用を柔軟にすると活性化が図られるかもしれません。子育てを終えた女性の再雇用を制度化すると、雇用や収入の安定化が図られるかもしれません。

 今進められている青森県の政策を、(1)から(3)まで述べてきたような政策に切り替える中で、地場産業、医療福祉、教育政策はどうあるべきでしょうか。県民一人一人が大切にされる青森県を、県民の知恵を寄せ合い作り上げていきましょう。政策を切り替えることにより、どんなことが出来るのか、今まで見えていなかったものが新たに見えてくるに違いありません。

 

 (5)県民の意見がもっと県政に反映するような仕組みをつくりましょう。 = 政策Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ参照

 「県政に県民の意見を反映させる」という一番大事な事がおろそかになりがちです。行政や議会でどんなことが審議され決められているのか、なぜそのような政策を実施することになったのか、などの情報の公開を、意思形成過程の開示も含めて徹底することが必要です。また、形式的、慣例的になりがちな各種委員会、審議会の強化と透明化は県民に開かれた県政を運営する上で重要です。

 県職員の天下り問題は、毎年県民に批判されています。県とつながりの深い公的団体の透明・健全な運営は、事業経営を前進させる上で不可欠な要素です。

以 上

 

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